化粧品・健康食品の実店舗卸|掛け率の相場と決め方

化粧品・健康食品の実店舗卸|掛け率の相場と決め方 卸・流通

掛け率とは、上代に対する下代の割合

掛け率とは、小売価格(上代)に対する卸価格(下代)の割合のことです。上代1,000円の化粧水を600円で卸すなら、掛け率は60%(6掛け)になります。

自社ECで1,000円で売っていた商品を実店舗に卸すと、入金されるのは600円です。差額の400円は、その商品を棚に置いて売ってくれるお店の取り分になります。掛け率は値引きではなく、お店と利益を分け合う比率です。ここを先に押さえると、提示された数字の読み方が変わります。

上代・下代・掛け率・歩率の意味

用語を先に揃えます。

  • 上代(じょうだい):店頭で消費者が払う価格。メーカー希望小売価格や店頭価格を指します

  • 下代(げだい):メーカーが小売店や卸に納める価格。卸値のことです

  • 掛け率:上代に対する下代の割合。60%なら「6掛け」と呼びます

  • 掛け目:掛け率と同じ意味で使われる言い方です

  • 歩率(ぶりつ):百貨店などで使う言い方。売れた金額のうち、メーカーの取り分になる割合です

計算式は2本だけです。

下代 = 上代 × 掛け率

掛け率 = 下代 ÷ 上代

上代2,980円の美容液を1,788円で納品しているなら、1,788 ÷ 2,980 で掛け率は60%です。「6掛けでお願いします」と言われたら、上代の60%が自社の入金額になると読み替えてください。

掛け率が5ポイント動くと、1個あたりいくら動くか

上代1,000円の商品を例に、掛け率ごとの下代を並べます。数字はすべて計算上の例で、税は含みません。

掛け率

下代(自社の売上単価)

小売側の粗利額

小売側の粗利率

50%(5掛け)

500円

500円

50%

55%(5.5掛け)

550円

450円

45%

60%(6掛け)

600円

400円

40%

65%(6.5掛け)

650円

350円

35%

70%(7掛け)

700円

300円

30%

掛け率が5ポイント動くと、1個あたり50円動きます。製造原価が1個350円だと仮定すると、5掛けでは1個150円しか残りませんが、7掛けなら350円残ります。同じ商品でも、1個で残る金額が2倍以上変わります。

小売の決算からは、掛け率は逆算できません

掛け率の交渉が綱引きになる理由は単純です。自社の取り分を1ポイント増やすと、お店の粗利が1ポイント減ります。

では、お店はどれくらいの粗利率で回っているのか。上場しているチェーンは決算で公表しています。

企業

決算期

売上高

売上総利益率(=店の粗利率)

マツキヨココカラ&カンパニー

2025年3月期

1兆616億円

39.5%

コスモス薬品

2025年5月期

1兆113億9,000万円

21.09%

出典:マツキヨココカラ&カンパニー2025年3月期決算短信(売上総利益率39.5%、前期比0.3ポイント上昇)、コスモス薬品2025年5月期決算(売上総利益2,132億8,100万円、売上総利益率21.09%)。

ここで注意してほしいことがあります。この数字をそのまま「掛け率の高低」として読むことはできません。小売の粗利は、メーカーからの仕入れ条件だけで作られているわけではないからです。

マツキヨココカラ&カンパニーは、「matsukiyo」「ARGELAN」などのPB(プライベートブランド=小売が自社で企画する商品)を強化し、メーカー向けの広告枠「Matsukiyo Ads」を使ったリテールメディア事業も収益の柱に位置づけています。(出典:同社「中期経営計画(2026年3月期〜2031年3月期)」2025年5月9日、リテールメディアJAPAN「Matsukiyo Ads」)PBは仕入れ原価が低く、広告収入は仕入れ条件とは別の収入です。どちらも売上総利益率を押し上げます。

一方のコスモス薬品は、売上構成比の6割を占める一般食品を軸にした低粗利・高回転のEDLP(常時低価格販売)型です。(出典:日本経済新聞「コスモス薬品の純利益25%増 6〜8月決算、原価抑制」、日本食糧新聞「コスモス薬品、売上高5000億円迫る EDLP・EDLC再徹底で競争力」)

つまり、粗利率が約18ポイント違うのは、掛け率が18ポイント違うからではありません。粗利の作り方が違うからです。決算から読み取るべきなのは掛け率の水準ではなく、相手がどうやって儲けている会社かという構造です。PBと広告で稼ぐ会社なら、掛け率以外の提案が出てきます。価格で集客する会社なら、価格対応の要請が強く出ます。

では掛け率の相場はどこにあるのか。日々その取引をしている問屋の担当者と、流通の専門家が持っています。「ドラッグストアの掛け率は◯%」と1つの数字で語ると実態から外れますが、業態と商品が決まれば、条件感を答えられる相手はいます。1社の提示だけで抱え込まないでください。

上代1,000円は、下代600円(60%)と小売粗利400円(40%)に分かれる
掛け率60%(6掛け)の場合、上代1,000円のうち600円が自社の下代、400円が小売店の粗利になる。 出典: 本文中の計算例(上代1,000円・掛け率60%)

%の数字より先に決めるのは、価格構造

掛け率の交渉から入ると、条件を落としやすくなります。先に決めるのは、自社の価格構造です。

「相場は何掛けですか」という質問から始めると、相手が出した数字が基準になります。そうではなく、自社が守るべき1個あたりの手取りを先に決めてから、それが何掛けに当たるかを計算してください。順番が逆になるだけで、交渉の立ち位置が変わります。

決める順序は4つ

  1. 1個あたりの製造原価を確定する。小ロット時と量産時の2本を出します

  2. 店頭でいくらなら買われるかを置く。これが上代の目安です

  3. 自社が守りたい1個あたりの手取りを決める。原価+固定費の回収分+利益です

  4. 3 ÷ 2 を計算する。これが、自社が出せる掛け率の下限になります

数字を当てはめた例を1つ示します。すべて仮定の数字です。上代1,980円の美容液で、製造原価が1個380円、守りたい1個あたりの手取りが900円だとします。

900 ÷ 1,980 = 45.5%。つまり、掛け率45.5%を下回る提示は受けられない、というのが自社の線になります。逆に50%でも55%でも、45.5%を上回っていれば成立する取引です。

この線を持っていると、「6掛けが相場らしいのに5.5掛けを提示された」という悩み方をしなくなります。判断するのは相場との差ではなく、自社の下限との距離です。

下限は「守る線」であって、狙う数字ではありません

ここで1つ、間違えやすい点があります。下限を計算したからといって、自分から相場より低い掛け率を提示するのは得策ではありません。

理由は単純です。相場どおりの掛け率で決まれば、その差額はそのまま自社に残ります。残った資金をPRに回したり、店頭の販促に使ったりできます。自分から掛け率を下げると、その原資が最初から消えます。棚に並べても売れないときに、打つ手だけがなくなる。これがいちばん困る状態です。

そのうえで、あえて低く出す手はあります。2つです。

  • 競合より少し低い上代にして、手に取られやすくする。上代が下がれば下代も下がりますが、初速をつくる狙いがあるなら成立します

  • 掛け率を低くして、問屋の取り扱いモチベーションを上げる。問屋の粗利が厚くなるぶん、配荷に力が入ることがあります

どちらの場合も、必ず条件とセットにしてください。相場より低い掛け率を出すなら、返品不可にする。ここは取ってください。自社に有利な条件を1つも付けずに掛け率だけ下げるのは、ただの値下げです。

上代は「希望」しか言えません。だから下代で守る

もう一つ、価格構造を先に決めるべき理由があります。店頭価格は、メーカーが決められる領域ではないからです。

公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」では、メーカーが流通業者の価格決定権を制限する行為(再販売価格の拘束)は、原則として不公正な取引方法として違法とされています。一方で、「事業者が設定する希望小売価格や建値は、流通業者に対し単なる参考として示されているものである限りは、それ自体は問題となるものではない」とも示されています。(出典:公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」)

だから「メーカー希望小売価格」という言い方になります。参考として伝えることはできますが、その価格で売らせることはできません。想定より安く売られるリスクは常にあります。

ここから導かれる結論は一つです。メーカーが守れるのは下代だけです。後から店頭価格を上げてもらって条件を立て直す、という手段は自社の手元にありません。最初の下代の設計が、そのまま取引の上限になります。

化粧品・健康食品は、掛け率の外側にコストが乗りやすい

この3カテゴリには、掛け率の欄に出てこないコストがあります。先に原価側へ織り込んでおくべきものです。

コスト

化粧品

健康食品

日用品

テスター・サンプルの無償提供

発生しやすい

発生することがある

発生しにくい

店頭什器・ATシール・POPの製作

発生しやすい

発生しやすい

発生することがある

配荷に合わせたPR・販促費

発生しやすい

発生しやすい

発生することがある

表示・制度対応(届出、GMPなど)

薬機法対応

機能性表示食品なら届出・GMP対応

品目により異なる

健康食品の制度対応は、2025年に負担が変わりました。消費者庁は機能性表示食品制度を見直し、サプリメント形状の食品へのGMPに基づく製造管理の位置づけや、届出後の定期的な自己評価・公表などを食品表示基準に定め、2025年4月1日から施行しています。GMP義務化などの体制整備が必要な項目には、2026年8月31日までの経過措置期間が設けられています。(出典:消費者庁「機能性表示食品について」)

届出のハードルも上がりました。2025年4月から研究レビュー作成で国際指針「PRISMA声明2020」への準拠が求められるようになり、2025年4月〜12月の届出件数は前年同期間比22.7%減の748件と報じられています。(出典:日本ネット経済新聞「機能性表示食品、届出件数は前年比2割減」)

これらは掛け率とは無関係に発生します。掛け率を1ポイント取りに行く前に、原価に入れておくべき項目です。

化粧品・健康食品・日用品で、考え方はどう違うか

3つを同じ物差しでは見られません。商流の形と、売場での見せ方が違います。

化粧品:売場に、説明してくれる人はいません

化粧品の流通は、業界で「制度品」「一般品」「無店舗販売(訪問販売・通信販売)」という区分で整理されてきました。制度品はメーカーが問屋を介さず小売と直接契約し、メーカー側の販売員が店頭で対面販売します。一般品はメーカーから卸売業者を経由して、ドラッグストアや量販店へ流通します。(出典:週刊粧業オンライン「化粧品の流通経路・販路は?」、EY Japan「化粧品・トイレタリー業界の範囲と各種商流の解説」)

初めて実店舗卸に出るブランドは、一般品の商流に乗ります。つまり問屋を経由する流れです。制度品は店頭の販売体制ごと自社で抱える形なので、立ち上げ期に選ぶ選択肢ではありません。

ここで勘違いしやすい点があります。「店頭で説明が必要な商品だから掛け率が下がる」という関係ではありません。そもそも、売場に自社の商品を説明してくれる人はいない前提で考えてください。

売場で商品を説明するのは、パッケージと、商品に貼るATシール(=目を引くための訴求シール)と、什器のPOPだけです。この3つで良さが伝わらない商品は、「売れない」と判断されて棚に入りません。掛け率の交渉より手前に、この関門があります。

やるべきことは、交渉材料を探すことではなく、シール1枚で何を言い切るかを決めることです。誰の、どの悩みに、何秒で刺さるのか。ここが決まっていない状態で商談に行くと、条件の話まで進みません。

市場の規模感も押さえておいてください。2025年の化粧品の国内出荷額は1兆3,909億1,500万円(前年比0.3%増)で、3年連続の増加でした(出典:経済産業省「生産動態統計」)。売場側では、日本チェーンドラッグストア協会の実態調査で、2024年度のドラッグストアのビューティーケア売上が1兆8,272億円(前年比11.7%増)となっています(出典:日本チェーンドラッグストア協会「日本のドラッグストア実態調査」2024年度)。伸びている売場です。

健康食品:棚が小さいぶん、初回の結果が効く

健康食品は、化粧品と比べて売場の規模が小さいカテゴリです。経済産業省の商業動態統計(2025年8月分速報)では、ドラッグストアの商品別販売額のうち、ビューティケア(化粧品・小物)が1,089億円、健康食品が263億円でした。約4分の1の規模です。

商品分類

2025年8月の販売額

前年同月比

食品

2,761億円

4.0%増

家庭用品・日用消耗品・ペット用品

1,106億円

2.2%減

ビューティケア(化粧品・小物)

1,089億円

5.2%増

OTC医薬品

875億円

1.4%増

トイレタリー

658億円

8.6%増

健康食品

263億円

4.8%増

出典:経済産業省「商業動態統計」2025年8月分速報(ドラッグストア販売額8,090億円、前年同月比3.3%増、店舗数2万176店)。

棚が小さいということは、1SKUに割り当てられる枠が少ないということです。初回の投入で結果が出ないと、次の棚替えで落ちるリスクが高くなります。健康食品で条件交渉をするなら、掛け率よりも「追加発注のリードタイム」と「初回の販促をどう設計するか」を先に詰めたほうが、結果に効きます。

制度対応コストは、前提によって扱いが変わります。いきなり実店舗から始める場合は、機能性表示食品として売るなら届出とGMP対応の費用が新たに原価へ乗ります。その状態で掛け率を下げると、1個あたりの手取りが一気に薄くなります。

一方、すでにD2Cで機能性表示食品として販売し、結果を出している会社なら話は別です。届出もGMP対応も済んでいるので、実店舗に出るために追加で払う費用ではありません。すでに払った費用を、より多くの個数で回収する形になります。この場合は、制度対応コストを理由に掛け率を渋る必要はありません。

日用品:伸び率から読めること

日用品は、公開データから傾向が読めるカテゴリです。

日本チェーンドラッグストア協会の2024年度調査では、ドラッグストア全体の売上高が10兆307億円(前年比109.0%)と初めて10兆円を超えました。カテゴリー別では、ビューティーケアが11.7%増、フーズ・その他が13.2%増と伸びた一方、日用品を含むホームケアは2兆388億円で2.1%増でした。(出典:日本チェーンドラッグストア協会「日本のドラッグストア実態調査」2024年度)

売場全体が2桁で伸びるなかで、ホームケアの伸びは相対的に小さい。この差から読めるのは、日用品は指名買いと価格比較が起きやすく、売場での価格競争にさらされやすい傾向があるということです。ただしこれは統計の伸び率から読めることまでであり、個別の品目や取引条件がこの傾向どおりになるとは限りません。

比べる軸

化粧品

健康食品

日用品

主な商流

問屋(卸)経由が基本。制度品は販売体制ごと自社で持つ例外

問屋経由が基本。ECとの併売が多い

問屋経由が基本

売場での見せ方

ATシール・什器・テスターで完結させる

パッケージとPOPで、表示できる範囲を伝える

定番の棚に並ぶ。価格と規格が見られる

掛け率に影響しやすい条件

販売実績、返品可否、配荷後のPR量

販売実績、返品可否、配荷後のPR量

販売実績、返品可否、配荷後のPR量

売場の規模(ドラッグストア)

ビューティーケア 1兆8,272億円(2024年度)

健康食品 263億円(2025年8月・月次)

ホームケア 2兆388億円(2024年度)

出典:日本チェーンドラッグストア協会「日本のドラッグストア実態調査」2024年度、経済産業省「商業動態統計」2025年8月分速報。規模の数字は集計範囲と期間が異なるため、単純比較はできません。

3つ並べるとわかることがあります。カテゴリが違っても、条件を動かす要素は同じです。販売実績があるか、返品を受けるか、配荷したあとにPRを打つか。この3つです。カテゴリ別の相場を覚えるより、この3つを自社の言葉で説明できるようにするほうが、交渉では効きます。

同じ商品でも、売場が変わると条件は変わる

カテゴリ別のレンジを覚えるより、どこに卸すかを先に決めるほうが実用的です。同じ化粧水を同じ月に出荷しても、相手がドラッグストアチェーンの本部か個店かで、自社に入る金額と付帯条件はまったく変わります。

その前に、商流の前提を1つ。実店舗卸は、基本的に問屋(卸)を通します。大手のドラッグストアチェーンの棚に、メーカーが直接商品を入れることはまずありません。メーカーが直接取引できるのは、ドン・キホーテのように自社で仕入れる体制を持つ一部の企業に限られます。以下の話も、原則として問屋が間に入る前提で読んでください。

ドラッグストアチェーン(本部取引)

この3カテゴリの主戦場です。1回の発注量が大きく、売上のインパクトは最大になります。

その代わり、掛け率は低めになりやすく、配荷する店舗数が多いぶん、什器・ATシール・テスターの費用がまとまってかかります。全店に什器を送るなら、その送料も自社持ちです。掛け率の欄に出てこない費用なので、配荷店舗数が決まった時点で1個あたりに割り戻して計算してください。

相手の粗利構造は決算で確認できます。ただし前述のとおり、粗利率の高さはPBやリテールメディアからも来ています。決算から読むべきなのは掛け率ではなく、相手の稼ぎ方です。粗利率の低いEDLP型のチェーンなら、価格対応の要請が強く出やすいと見ておくのが妥当です。

バラエティショップ(ロフト、プラザ、ドン・キホーテなど)

化粧品・健康食品の新規ブランドにとって、実績を作りやすい売場です。売場の担当者の裁量が比較的大きく、初回は小さく試したいという事情もあるため、初回ロットや納期の相談が通りやすい傾向があります。

注意点は取引額の小ささです。小ロットゆえに1回あたりの金額が小さく、送料・什器・販促物の負担が乗ると、粗利がほとんど残らない取引になりかねません。メーカーにとって、この売場の価値は利益よりも実績と露出です。「実店舗で売れている」という事実を作る目的なら優先度は高い。利益の柱として設計するなら、優先度は低いと判断してかまいません。

食品スーパー

健康食品と日用品が入りやすい売場です。日々の買い物のなかで手に取られるため、単価の低い定番品と相性がよいチャネルです。

一方で化粧品は、スーパーだと売場の面積が小さく、扱える点数が限られます。説明が必要な化粧品を持ち込むと、置き場所が確保されないリスクがあります。

化粧品専門店・個店(直取引)

中間業者がいないぶん、掛け率は高めに設定できます。立ち上げ期に、商品の使い方をきちんと伝えてくれる売場を確保したいなら有効です。

ただし、店舗開拓・見積提示・受注処理・請求・入金確認をすべて自社で回します。店数が増えるほど、受発注業務そのものに人手が必要になります。掛け率の差は、この工数の対価だと考えてください。

そして、ここで積める店数には限りがあります。配荷を広げる段階になれば、結局は問屋経由に移ります。個店の直取引は、立ち上げ期の実績づくりと位置づけるのが現実的です。

卸(問屋)経由:実店舗卸の基本形

問屋に納品し、問屋が小売店に配荷する形です。実店舗卸のほとんどはこの形になります。問屋は自分の粗利を確保する必要があるので、メーカーの掛け率はそのぶん下がります。

見返りは配荷スピードと、受発注業務の集約です。自社で個別に営業をかけるより短期間で店数を積めます。それ以上に大きいのは、大手チェーンに入るための事実上の入口がここだということです。「掛け率が下がるから問屋を通さない」という選択は、大手の棚を狙うなら成立しません。

もう一つ。問屋の担当者は、日々その取引をしています。カテゴリごとの条件感を持っているのはメーカー側ではなく問屋側です。提示された掛け率が妥当かを確かめたいなら、まずここに聞いてください。

自社EC・ECモール(比較の物差しとして)

卸の条件を評価するとき、比較対象としてECを同じ物差しに乗せてください。ECなら上代の全額が入りますが、広告費・決済手数料・送料・モール手数料が引かれます。

ECの実質の手取り率が卸の実質の掛け率を下回るなら、卸のほうが効率的だという判断も成り立ちます。「ECより条件が悪いから受けない」という判断をするなら、ECの手取り率を先に出しておく必要があります。

売場

取り分の目安

初期ロット

自社が負担しやすい費用

3カテゴリでの向き

ドラッグストアチェーン(本部)

低め

大

問屋倉庫までの送料、什器、ATシール、テスター、全店分の什器送料

化粧品・健康食品・日用品すべて

バラエティショップ

中〜高め

小

問屋倉庫までの送料、什器・備品、販促物、テスター、全店分の什器送料

化粧品・健康食品の立ち上げ期

食品スーパー

低め〜中

中〜大

問屋倉庫までの送料

健康食品・日用品

化粧品専門店・個店(直取引)

高め

小

営業工数、受発注業務、小口送料

化粧品の立ち上げ期

掛け率の数字だけで判断すると、手取りが逆転する

ここがこの記事の中心です。掛け率は取引条件の一部でしかありません。掛け率が良くても、他の項目が重ければ実質の手取りは簡単に逆転します。

ここから先の判断を自社に当てはめると、迷う部分が出てきます。どの項目をどこまで押すか、という線引きは、FBPの無料相談でも実際によく聞かれる論点です。

支払いサイト:2026年1月から法律の線が変わりました

支払いサイトとは、納品してから入金されるまでの期間です。ここは制度が変わったので、最新の線を押さえてください。

従来の下請法は、2026年1月1日施行の改正で「中小受託取引適正化法(取適法)」になりました。支払期日は物品等を受領した日から60日以内とされ、加えて手形払いが禁止されます。従来は支払日までの60日に手形サイト60日が加わり、現金を受け取るまで最長120日となる構造がありましたが、手形払の禁止により、支払日までの期間=現金受領までの期間となります。また、中小受託事業者からの価格協議の求めに応じず一方的に代金を決定することも違反となりました。(出典:公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ」、中小企業庁「改正ポイント説明会」資料)

自社がこの法律の中小受託事業者に当たる取引なら、60日超の提示は交渉できる余地があります。まず、自社と相手が適用対象かを確認してください。

支払いサイトが長いというのは、その間、商品の代金を自社が立て替えているという意味です。下代600円の商品で120日なら、約4か月、1個につき600円が戻ってきません。

金額に直すと小さく見えます。年3%で資金を借りていると仮定すれば、1個あたり約6円が待つコストです。45日なら約2円です。

効いてくるのは金額よりも資金繰りのほうです。初回ロット分の現金が4か月戻らないので、その間の追加生産や、配荷に合わせたPRに回す現金が足りなくなります。サイトの短縮は金額の譲歩を求めない交渉なので、最初に持ち出す価値があります。

買取か委託か:返品のリスクを誰が持つか

買取なら、納品時点で売上が確定します。委託・消化仕入れなら、売れなければ商品が戻ります。

この3カテゴリで最も手取りを左右するのは、掛け率ではなく返品の可否です。化粧品は店頭に並んだ時点で再販が難しくなります。健康食品は賞味期限があるため、戻ってきた時点で残存期間が短くなっています。つまり、返品された商品はほぼそのまま損失になります。

なお、返品は無制限に受け入れる前提のものではありません。公正取引委員会の「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」(大規模小売業告示)では、大規模小売業者が納入業者から購入した商品の全部または一部を返品することは、正当な理由がある場合を除いて禁止行為とされています。(出典:公正取引委員会「大規模小売業告示」)

テスター・サンプル:無償が当たり前ではありません

化粧品でとくに効いてくる項目です。全店分のテスターの無償提供や、販売員の店頭派遣を求められることがあります。

ここも告示に線が引かれています。大規模小売業告示では、大規模小売業者が自己の業務に従事させるために納入業者の従業員等を派遣させて使用することは、原則として禁止されています。例外は2つです。①あらかじめ納入業者の同意を得て、その従業員等を当該納入業者の納入に係る商品の販売業務のみに従事させる場合(販売に関する技術・能力が有効に活用され、当該納入業者の直接の利益となる場合に限る)、②業務内容・労働時間・派遣期間などの条件をあらかじめ合意し、かつ派遣のために通常必要な費用を大規模小売業者が負担する場合です。運用基準では、「通常必要な費用」とは実際にかかる人件費のほか交通費や宿泊費等をいい、費用の一部しか負担しない場合は合意があっても例外には当たらないとされています。(出典:公正取引委員会「大規模小売業告示」および同運用基準)

テスターは、配荷店舗数に比例してまとまった数が必要になります。何店舗分を、いつまでに、誰の費用で出すのか。ここは金額が読めるので、先に数字にしておいてください。

什器・テスター・リベート:掛け率の欄には出てきません

掛け率の欄に出てこない費用は実在します。ただし内訳は、想像されているものと違います。

新規で実店舗卸に出るメーカーが実際に負担するのは、専用什器、ATシール、テスター、店頭POPの製作費です。これらは自社の費用で作り、自社の費用で送ります。下代の数%を「販促協力金」として請求される形は、このカテゴリの新規取引ではまず出てきません。

なお、商談で「棚代」という言葉が出てきたら、棚を借りる家賃のような費用だと考えないでください。「棚代」はリベートのことです。呼び方が違うだけで、中身は売上や数量に応じて下代の数%を戻す取り決めです。

掛け率の欄の外で出てくることがあるのは、次の2つです。

  • リベート(「棚代」と呼ばれることもあります):一定の売上や数量を超えたら、その分を数%戻す取り決めです。売れたら払う形なので、売れなければ発生しません

  • クーポン・ポイントの原資負担:セールやポイント還元の原資をメーカーが一部持つ形です

どちらも掛け率の欄には書かれません。とくに先に決めるべきなのはリベートです。どの金額・数量を超えた分から、下代の何%を戻すのか。この率を決めて、書面に残してください。「そのつどご相談」のまま進めると、後から率が決まります。

クーポン・ポイントの原資は、金額の上限を決める形にはなりません。セールのたびに条件が変わるためです。

法律上の線も引かれています。大規模小売業告示では、納入業者が本来提供する必要のない金銭等を提供させること、また納入業者が得る利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えて提供させることが禁止されています。具体例として、決算対策協賛金のような本来提供する必要のない金銭等が挙げられています。(出典:公正取引委員会「大規模小売業告示」運用基準)

納品と送料:どこまでが自社負担か

問屋経由が基本なので、メーカーが物を運ぶ先は、まず問屋の倉庫です。問屋の倉庫までの送料は、基本的にメーカー負担です。ここは交渉しても動きません。前提として原価に入れてください。

什器も同じです。什器は問屋の倉庫ではなく、配荷される各店舗に直接送ります。この送料もメーカー負担です。100店舗に配荷するなら、什器100台分の製作費と送料が、配荷のタイミングでまとめて出ていきます。

動かせるのは返品の送料です。返品を受ける条件で合意するなら、返品時の送料は問屋負担にしてください。ここを決めずに返品を受けると、戻ってきた商品の代金だけでなく運賃まで自社持ちになります。

なお、小売のセンターに直接納品する取引では、センターフィー(物流センターの利用料)の話が出ることがあります。農林水産省の「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」(2021年12月策定、2026年1月改定)では、物流センターを利用していないのに利用を名目とした協賛金等の負担要請に応じざるを得ない状況は、優越的地位の濫用につながり得るとされています(出典:農林水産省)。問屋経由が基本の取引では、まず論点になりません。

1個あたりの実質手取りで並べ直す

ここまでの項目を1個あたりの金額にします。上代1,000円の商品で、2つのケースを比べます。控除は性質の近いものを3つのブロックにまとめました。返品率・リベート率・PR費・資金コストの前提は、すべて仮定の数字です。

項目

ケースA(掛け率65%・大手チェーンに一括配荷)

ケースB(掛け率55%・返品不可で小さく開始)

下代

650円

550円

返品・リベート・ポイント原資(各3%/なし)

−60円

0円

什器・ATシール・テスター・送料

−30円

−20円

PR費・支払サイトの資金コスト(120日/45日、年利3%)

−56円

−12円

1個あたりの実質手取り

504円

518円

実質の掛け率

50.4%

51.8%

掛け率で10ポイント高いケースAのほうが、1個あたり14円少なくなりました。表面上は6.5掛けでも、手元に残るのは5掛け相当です。

効いているのは、個別の項目の大きさではありません。小さい控除が重なることと、返品を受けたことです。返品率が1ポイント上がるごとに、下代650円なら1個あたり6.5円が消えます。返品率が3%から10%になれば、それだけで約46円。掛け率を5ポイント下げるのと同じ重さです。

だから、掛け率を1ポイント取りに行くより、返品不可で合意するほうが手取りは増えます。交渉の優先順位はここです。

条件書を読むときに最初に埋めるべきなのは、掛け率の欄ではありません。この表の各行です。埋まっていない行は、たいてい自社側の負担になります。

掛け率65%と55%、条件次第で1個あたりの実質手取りは逆転する
上代1,000円という前提での試算例。掛け率が高いケースAでも、返品・リベート・PR費などの控除が重なると、1個あたりの実質手取りは掛け率が低いケースBより少なくなる。 出典: 本文の試算(上代1,000円の前提による計算例)

提示された条件が妥当か見極める2つの手順

実際に条件書を受け取ったときの手順です。2つで判断できます。

手順1:実質手取り単価を出す

見るのは掛け率ではなく、控除後に1個あたりいくら残るかです。引くものは5つです。返品、リベートやポイントの原資、問屋倉庫までの送料と什器・ATシール・テスターの費用、配荷に合わせて打つPR費、入金を待つ間の資金コストです。

数字を当てはめた例を1つ示します。すべて仮定の数字です。上代1,000円の美容液で、掛け率60%を提示されたとします。あわせて、返品率3%、リベートとポイント原資が合わせて下代の3%、送料と什器・テスターが1個あたり30円、配荷に合わせたPR費が1個あたり50円、支払いサイト120日・借入金利は年3%という条件だったとします。表では、前章と同じ3つのブロックにまとめています。

項目

この例の金額

出し方

下代

600円

上代1,000円 × 60%

返品・リベート・ポイント原資

−36円

600円 ×(返品率3% + 3%)

什器・ATシール・テスター・送料

−30円

問屋倉庫までの送料+店舗分の什器・備品を出荷数で割った額

PR費・資金コスト

−56円

初回販促費を出荷数で割った額+600円を約4か月待つ分(年3%で試算)

実質手取り単価

478円

600 − 36 − 30 − 56

実質の掛け率

47.8%

478円 ÷ 上代1,000円

提示は6掛けでも、手元に残るのは4.8掛け相当です。120円以上が、掛け率の欄には書かれていない項目で消えています。

コツは、金額ではなく率と1個あたりで聞くことです。「返品は受ける条件ですか」「リベートは何%からですか」「ポイントの原資負担はありますか」「什器とテスターは何店舗分、いつまでに必要ですか」と聞けば、年間の出荷個数がわからなくても、その場で1個あたりの計算ができます。答えが返ってこない項目は、後から自社の負担になりやすい箇所です。

手順2:自社の原価とPR費に照らす

実質手取り単価から、製造原価を引きます。残った金額が、その取引の1個あたり粗利です。

ここで抜けやすいのがPR費です。棚に並べただけでは売れません。配荷に合わせてSNSや広告を打つ前提なら、その費用も1個あたりに割り戻して引いてください。手順1の表にPR費を入れてあるのはそのためです。PRを打たない前提で計算すると、机上では粗利が出ているのに商品が動かない、という結果になります。

そのうえで、手順の冒頭で決めた「守りたい1個あたりの手取り」と比べます。下回っていれば、掛け率が何掛けであっても受けるべき取引ではありません。上回っていれば、数字の上では成立します。

実店舗から新たに機能性表示食品を始めるなら、届出とGMP対応にかかった費用も原価側に入れてください。すでにD2Cで届出を済ませている商品なら、この分は不要です。

比べる相手は「業界の相場」ではなく、自社が決めた下限です。そのうえで相場を確かめたいなら、問屋の担当者か流通の専門家に聞いてください。日々その取引をしている側が数字を持っています。

掛け率が動かないときに動かす4つの条件

大手ほど掛け率は社内基準で固定されており、動きにくいものです。そのときは別の欄を動かします。優先順位はこの順です。

  1. 返品を受けない条件にする:ここが最も手取りに効きます。前章の試算のとおり、返品率が数ポイント動くだけで掛け率数ポイント分が消えます。どうしても返品を受けるなら、返品時の送料は問屋負担にしてください。なお、問屋の倉庫までの送料と、各店舗に送る什器の費用はメーカー負担が基本です。ここは動かない前提で計算に入れます

  2. 支払いサイトの短縮:金額の譲歩を求めていないので、相手も応じやすい項目です。自社が取適法の中小受託事業者に当たる取引なら、60日以内という法律上の線を根拠にできます

  3. リベートの率を書面で決める:「どの金額・数量を超えた分から、下代の何%を戻すのか」を書面に入れます。合理的であると認められる範囲を超える提供は大規模小売業告示で禁止されているため、率の書面化は筋の通った申し入れです。クーポン・ポイントの原資は金額の上限を決める形にはならないので、負担する割合と対象期間を確認しておきます

  4. 初回の配荷とPRのタイミングを合わせる:棚に並ぶ週に合わせてPRを打つ、と決めてから配荷店舗数を確定します。配荷が先行してPRが後追いになると、最初の数週の数字が出ず、次の棚替えで落ちます

掛け率1ポイントを取りに行くより、この4項目を整えたほうが1個あたりの手取りは増えます。前章の試算がそれを示しています。

EC実績を売場向けに翻訳する

ECでの販売実績は、そのままでは相手に響きません。「累計◯万個販売」はメーカー側の指標だからです。売場の担当者が知りたいのは、自分の店で売れるかどうかです。

次のように翻訳してください。

  • ECでどれだけ売れているか:これは指標になります。販売数量と、月ごとの売れ方まで出してください。伸びているのか横ばいなのかで、受け取られ方が変わります

  • 配荷後にどれだけPRを打つか:最も強い材料です。棚に並べたあと、いつ・どの媒体で・どれだけ露出を作るのかを、時期と金額で示します。売場が知りたいのは、置いたあとに誰が売ってくれるかです

  • リピート率:化粧品・健康食品では特に効きます。再購入されている商品は、棚に置き続ける価値があると判断されます

  • 購入者の地域分布:相手チェーンの出店エリアに購入者が多いなら、そのまま導入根拠になります

  • 購入者の年齢・性別構成:店の客層と重なるかを相手が判断できます

  • SKU別の売れ筋順位:初回に何を何点置くべきかの提案になります

  • 他店での実売データ:すでに卸している店があるなら、1店舗あたりの週販個数が最も具体的な材料です

数字は自社の管理画面から出せます。掛け率が動かなくても、初回ロットや棚の位置は動くことがあります。

受けない条件を、先に決めておく

交渉に入る前に、撤退ラインを決めます。最低限、次の3つを紙に書いてから席に着いてください。

  • 1個あたりの実質手取りがいくらを下回ったら受けないか

  • 支払いサイトが何日を超えたら受けないか

  • 初回ロットがいくつを超えたら受けないか

実店舗卸は、一度条件を決めると次回以降の基準になります。最初に無理な条件を飲むと、その水準が既定値になり、後から引き上げるのは難しくなります。断る判断も、立派な卸戦略です。

「掛け率の提示を受けたが妥当か判断できない」「初回の商談前に条件を整理したい」「返品を受けるかどうかの線を決めたい」——こうした段階なら、30分の無料相談で整理できます。

よくある質問

化粧品の掛け率の相場はいくらですか

1つの数字で示すと、実態から外れるリスクが高い項目です。掛け率は取引当事者間の個別契約で決まるため、カテゴリごとの平均値を集計した公的統計はありません。決算書から逆算することもできません。上場ドラッグストアの売上総利益率には39.5%(マツキヨココカラ&カンパニー2025年3月期)と21.09%(コスモス薬品2025年5月期)の開きがありますが、この差はPBの比率やリテールメディアなど、仕入れ条件以外の要素からも生まれています。相場を持っているのは、日々その取引をしている問屋の担当者と流通の専門家です。自社の下限を先に出したうえで、そこに確かめてください。

健康食品は化粧品より掛け率が高いのですか

カテゴリの違いで決まるわけではありません。掛け率を動かすのは、販売実績があるか、返品を受けるか、配荷後にPRを打つかの3つです。この3つは化粧品でも健康食品でも変わりません。ただし健康食品は、実店舗から新たに始める場合、機能性表示食品の届出やGMP対応という原価側のコストが乗ります。掛け率が高くても、原価が重ければ1個あたりの手取りは薄くなります。比べるのは掛け率ではなく、原価とPR費を引いた後の1個あたり粗利です。

自社ECの価格と店頭の上代は揃えるべきですか

揃えるべきです。自社ECのほうが安いと、店頭で見て自社ECで買う行動が起きます。小売店から見れば、自分の店が展示場にされている状態で、取引を見直される原因になります。ただし、店頭の販売価格を指定することはできません。公正取引委員会のガイドラインでは、メーカーが流通業者の価格決定権を制限する行為は原則として違法とされ、希望小売価格は参考として示す限り問題にならないとされています。できるのは、自社ECの価格設計とセールの運用を自分で律することです。ECでセールをする場合は、卸先に事前に伝えるか、実店舗向けの型番を分けるなどの整理をしてください。

5掛けを提示されました。受けるべきですか

掛け率だけでは判断できません。手順1で1個あたりの実質手取りを出し、自社が決めた下限と比べてください。返品不可・支払いサイト45日の5.5掛けは、返品ありで120日の6.5掛けより手元に多く残ることがあります。前章の試算がその例です。判断すべきは5掛けという数字ではなく、控除後にいくら残るかです。

卸を通すのと直接卸すのは、どちらが得ですか

実店舗卸は、基本的に問屋を通す商流です。大手のドラッグストアチェーンの棚に、メーカーが直接商品を入れることはまずありません。直接取引ができるのは、ドン・キホーテのように自社で仕入れる体制を持つ一部の企業に限られます。掛け率だけを見れば直取引が有利ですが、そこで積める店数には限りがあります。配荷を広げる段階では問屋経由になる、と考えてください。掛け率が下がる代わりに、配荷網と受発注業務を引き受けてもらえます。

掛け率は途中で見直せますか

見直しを申し入れる根拠は、2026年1月から強くなりました。取適法では、中小受託事業者からの価格協議の求めに応じず一方的に代金を決定することが違反とされています。協議を明示的に拒む場合だけでなく、求めを無視したり繰り返し先延ばしにする場合も違反に当たります(出典:公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ」)。申し入れるときは、原材料費・製造費の上昇分を数字で示し、いつから何%見直したいかを事前に文書で伝えてください。実売データが揃っている商品ほど、話は通りやすくなります。

初めての卸取引で、最低限決めておくべき条件は何ですか

次の5つを書面で確定してください。①掛け率、②支払いサイト、③買取か委託か(返品の可否・期限・返品時の送料負担)、④初回ロットと追加発注の最小ロット・リードタイム、⑤テスター・什器・ATシールを何店舗分、いつまでに用意するかです。口頭で合意した項目は、必ず書面に落としてください。「そのつどご相談」と書かれた欄は、後から自社の負担になりやすい箇所です。

まとめ:掛け率は交渉の入口であって、結論ではない

要点は3つです。

  • 掛け率は「お店と利益を分け合う比率」です。カテゴリ別の平均値を集計した公的統計はなく、小売の決算からも逆算できません。粗利率の差はPBやリテールメディアからも生まれるからです。相場を持っているのは問屋の担当者と流通の専門家です

  • %の数字より先に、価格構造を決めてください。原価 → 上代の目安 → 守りたい1個あたりの手取り → その手取りが何掛けに当たるか。この順で出した下限が、交渉の基準になります。ただし下限は守る線であって、自分から相場より低く出す数字ではありません

  • 判断材料は1個あたりの実質手取りです。返品・リベートやポイント原資・問屋倉庫までの送料・什器やテスター・配荷に合わせたPR費・支払サイトの資金コストを引いた後で比べます。6.5掛けが5掛け相当に落ちることは起こります

そのうえで、次のような状況にあるなら一度ご相談ください。

  • ドラッグストアやバラエティショップから条件書を受け取ったが、掛け率と付帯条件が妥当か自社で判断できない

  • 自社ECの実績はあるが、実店舗の担当者に何を提示すればよいかわからない

  • 返品を受けるかどうか、リベートの率をどこで区切るか、線を引けない

  • 機能性表示食品の届出費用を織り込んだうえで、下代の下限をどこに置くべきか決めきれない

FBPは、化粧品・健康食品・日用品のメーカー・D2Cブランドの実店舗卸への参入を支援しています。条件書を拝見したうえで、1個あたりの実質手取りの試算と、交渉で動かせる項目の整理をお伝えします。30分の無料相談についてからご連絡ください。

この記事の要点

  • 掛け率とは上代に対する下代の割合。お店と利益を分け合う比率です

  • 相場を聞く前に、原価から守りたい1個あたりの手取りと下限を決めます

  • 判断材料は控除後の1個あたり実質手取り。6.5掛けが5掛け相当に落ちます

よくある質問

掛け率とは何ですか?

小売価格(上代)に対する卸価格(下代)の割合のことです。上代1,000円の化粧水を600円で卸すなら掛け率60%(6掛け)です。値引きではなく、お店と利益を分け合う比率です。下代=上代×掛け率、掛け率=下代÷上代の2本で計算できます。

化粧品の掛け率の相場はいくらですか?

1つの数字では示せません。掛け率は個別契約で決まり、カテゴリ別の平均値を集計した公的統計はないためです。小売の決算からも逆算できません。売上総利益率の差は、PBの比率やリテールメディアなど仕入れ条件以外の要素からも生まれるからです。相場を持っているのは問屋と流通の専門家です。

5掛けを提示されました。受けるべきですか?

掛け率だけでは判断できません。返品・リベートやポイント原資・送料・什器やテスター・配荷後のPR費・資金コストを引いた1個あたりの実質手取りを出し、自社が決めた下限と比べてください。返品不可・支払いサイト45日の5.5掛けが、6.5掛けより手元に多く残ることもあります。

掛け率が動かないとき、何を交渉すればよいですか?

4つの条件を動かします。①返品を受けない条件にする(受けるなら返品時の送料は問屋負担)、②支払いサイトの短縮、③リベートの率を書面化する、④初回の配荷とPRのタイミングを合わせる。掛け率1ポイントを取りに行くより、この4項目を整えるほうが1個あたりの手取りは増えます。

卸を通すのと直接卸すのは、どちらが得ですか?

実店舗卸は基本的に問屋を通します。大手ドラッグストアの棚に直接入ることはまずなく、直接取引ができるのはドン・キホーテのように自社で仕入れる体制を持つ一部の企業です。掛け率だけなら直取引が有利ですが、積める店数に限りがあります。配荷を広げる段階では問屋経由になります。

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