日常生活に欠かせない日用品や食品、さらには医薬品までを幅広く取り揃えるドラッグストアは、今や国民にとって重要な生活インフラとなりつつあります。
実際に、ドラッグストアの売上高は10年で約3兆5000億円上昇し、業界規模は10兆円まで達しました。店舗数は10年で約6500店舗純増し、約2万店舗まで拡大しています。
本記事では、この力強い成長の背景にある要因を、経済産業省の統計データと各社IR情報をもとに数字で解説します。ドラッグストアという業態への理解を深め、同チャネルへの商品展開を検討する際の判断材料としてご活用ください。
※データを参照する際の注意点
売上や店舗数のデータは「経済産業省のデータ」と「日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)のデータ」の2種類が混在して紹介されることが多いため、以下の違いを押さえておくと迷いません。
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経済産業省(商業動態統計):「50店舗以上を有する企業」など一定基準を満たす大型チェーンを中心に集計
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JACDS(実態調査):小規模なローカルチェーンも含め、業界全体を幅広く網羅して独自集計
本稿では、大型チェーンの動向を色濃く反映した「経済産業省の統計データ」を中心に解説します。
ドラッグストア業界全体の売上推移
まずは、経済産業省のデータをもとにドラッグストア業界全体の売上推移をまとめました。


10兆円規模まで成長できた背景
2020年度から2022年度にかけてのコロナ禍およびアフターコロナの局面では、マスクや消毒液といった衛生用品の需要が急増しました。
これに合わせ、ウエルシアホールディングスやツルハホールディングスなどの主要チェーンが食品ラインナップを大幅強化したことで、スーパーマーケットを利用していた層を効果的に取り込み、逆風下でも安定的な成長を維持することに成功しました。
さらに、2024年度の急激な伸長については、訪日外国人によるインバウンド需要の劇的な回復が大きな原動力となりました。
加えて、処方箋応需を狙った「調剤併設型店舗」の拡大も寄与し、前年比9.0%増という過去20年間で類を見ない極めて高い成長率を達成するに至りました。
ドラッグストアの店舗数推移
経済産業省のデータ(年度)による、過去10年間の全国ドラッグストア総店舗数の推移です。


店舗数推移からみる市場の特徴
過密化とドミナント戦略
全国で1万9,000店舗を超えたことで、主要な駅前や幹線道路沿いでは大手チェーン同士の競合が激化しています。特定の地域に集中出店して物流や広告の効率を高める「ドミナント戦略」をとる企業(クリエイトSDやクスリのアオキなど)が目立ちます。
1店舗あたりの売上効率の大幅な向上
2015年と2024年を比較すると、店舗数は約1.46倍(約1.37万店→約2.0万店)に増えているのに対し、売上高は約1.65倍(約5.5兆円→約9.0兆円)に跳ね上がっています。これは1店舗の中に「調剤」や「食品スーパー」の機能を組み込んだことで、1店舗が稼ぎ出す売上パワーが大幅に強くなったことを意味しています。
特筆すべきは直近の動向で、前年比で796拠点もの純増を達成しており、その出店スピードは依然として加速し続けています。
この安定した店舗数の増加は、ドラッグストアが国民生活に不可欠な「重要な生活インフラ」としての地位を確固たるものにしていることを裏付けています。
主要ドラッグストアの売上ランキング(2024年度IR情報より)
ツルハホールディングスは2025年だと9.5ヶ月分の情報しか記載がないため、決算期を2024年に統一しています。

参考:非上場企業の発表売上高
・ナチュラルHD:約3,180億円(公式企業情報より)
・富士薬品(セイムス等):約3,862億円(公式企業情報より)
ランキングから読み解く、業界構造と今後の展開に関する4つの考察
1. 上位3社による市場の独占的支配
ウエルシア、ツルハ、マツキヨココカラの主要3法人がすべて売上高1兆円の大台を突破し、後続との差を圧倒的に広げる「3強体制」が確立されました。物価高騰や調剤報酬改定といった経営環境の変化に対し、規模の経済を最大限に活用できる巨大資本への集約が急加速しています。
2. 「2.5兆円規模」の超巨大連合が市場に与える衝撃
2025年末に実行されたウエルシアとツルハの経営統合は、業界に激震を走らせました。合算売上高は約2.5兆円という驚異的な規模に達し、3位以下に差をつける企業が誕生しました。この巨大な購買力を背景とした仕入れ交渉力の強化は、業界全体の価格競争をかつてない次元へと押し上げています。
3. 成長戦略の二極化:食品シフトと専門性特化
上位企業の生存戦略は、得意領域によって明確なコントラストを見せています。
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ディスカウント・食品強化型(コスモス薬品、アオキ等):売上の大半を低価格な食品が占め、利便性と価格を武器に既存スーパーのシェアを奪取する地方・郊外型の戦略
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高収益・ヘルス&ビューティ型(マツキヨ、スギ等):利益率の高い化粧品や、高度な専門性が求められる調剤部門を主軸に据え、都市部や医療連携によって高収益を実現する戦略
4. 「地域生活インフラ」への進化
クスリのアオキが各地の食品スーパーを積極的に吸収合併し、5,000億円企業へと飛躍した動きは象徴的です。現在のドラッグストアは、単なる薬の販売店から「地域のスーパー代替インフラ」へとその役割を拡張させています。今後は同業者間のみならず、異業種をも巻き込んだ大規模な合従連衡がさらに進展すると予測されます。
ドラッグストアのカテゴリー別売上
経済産業省「商業動態統計」(年度)が分類する主要カテゴリの売上高・構成比のデータです。

2024年度のカテゴリ別売上内訳からは、ドラッグストアが従来の「薬を売る店」から「生活すべてを支える総合インフラ」へと完全に変貌を遂げた姿が読み解けます。主な考察のポイントは以下の4つです。
1. 食品の成長
全カテゴリの中で前年比+13.2%という突出した伸び率を記録し、売上構成比も28.2%に達しています。冷凍食品や生鮮食品、惣菜といった日常の食卓に直結する商品を強化した結果、スーパーの代わりにドラッグストアで日常の買い物を済ませる「ワンストップショッピング」の需要を完全に吸収したことを示しています。
2. 「調剤」が牽引するヘルスケア部門の安定性と社会インフラ化
「調剤・ヘルスケア」は全体の33.2%を占める最大の柱であり、その中でも「調剤」単体の売上が1.5兆円を超えて成長しています。利幅の薄い食品で集客し、調剤やOTC医薬品で高い利益を確保するという、現在のドラッグストア特有の強力な収益モデルが機能している証拠です。
3. インバウンド復活と「ビューティケア」の2桁成長
「ビューティケア(化粧品・ヘアケア等)」が前年比+11.7%と2桁の急回復を見せました。訪日外国人観光客によるインバウンド需要の本格復活と、国内の外出機会の増加に伴う高価格帯化粧品の伸びが要因で、マツキヨココカラなどの都市型・観光地型店舗の業績を大きく押し上げました。
4. 日用品(ホームケア)の成熟と価格競争
洗剤やティッシュなどの「ホームケア」は前年比+2.1%と微増にとどまり、構成比も20.3%と最も低い成長率となりました。市場が成熟し、ECサイトとの価格競争が最も激しい分野であるため、各社は利益率の高いPB(プライベートブランド)商品の開発・切り替えを急速に進めています。
エリア別・主要ドラッグストアの店舗数
上位各社の店舗数とエリアを、各企業ホームページの最新情報(2026年6月時点)からまとめました。※並び順は売上ランキング順です。







まとめ|ドラッグストアへの商品展開を検討する方へ
本記事では、経済産業省の統計や各社のIR情報をベースに、業界全体の売上推移から店舗数、主要チェーンの勢力図、カテゴリ別の詳細分析までを概観してきました。これらのデータが、ドラッグストアという巨大市場への進出を目指す皆様にとって、確かな指針となれば幸いです。
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