Web広告の顧客獲得単価が高騰を続ける中、次なる成長の柱として「オフライン(実店舗)への進出」を検討するD2C企業が増えています。しかし、いざ量販店やバラエティショップへの展開を想像した途端、経営者の多くは足踏みをしてしまいます。
「全国の店舗に並べるためには、何万個という在庫を作らなければならないのではないか?」
「もし売れ残って一斉に返品されたら、資金繰りがショートしてしまうのではないか?」
こうした巨大な在庫リスクを抱えるという恐怖が、オフライン進出の最大の壁となっているのです。しかし、その不安は「小売展開=いきなり全国一斉発売」という、一昔前の古い常識に縛られているからこそ生まれる誤解にすぎません。本記事では、すでにECで売上を作っているD2Cブランドが、最小限の在庫リスクで問屋(卸売業)の流通網に乗るための「スモールスタート戦略」の全貌を解説します。小売展開に不安を抱える中小企業の経営者やD2C担当者こそ、この戦略で安全かつ確実に卸ビジネスへと拡大していきましょう。

数店舗でテスト展開して、在庫リスクを最小化
在庫数百個で小売販売をスタートさせる
小売店舗への進出において、最初から全国の棚を埋め尽くすための在庫を用意する必要は一切ありません。現在のD2Cブランドがオフライン進出を果たす際は、特定のエリアや少数の店舗に絞り込んだ「テスト販売」の戦略から始められます。たとえば、全国に1,000店舗を構える大手ドラッグストアチェーンとの取引を想像してみてください。「全店舗の棚に5個ずつ並べるから、初回で最低でも5,000個の在庫と、数百万円の資金が必要だ」と身構えるのは大きな間違いです。実際の初回商談では、「まずは都心の旗艦店や、売上上位の30店舗のみで、1ヶ月間テスト販売をさせてほしい」と提案します。この手法であれば、必要な初期在庫は「30店舗×各5個=150個」程度で済みます。すでに自社にあるEC用の在庫を少し振り分けるだけで対応できる数字です。わざわざ莫大な追加資金を投じて、工場の製造ラインを新たに動かす必要はないのです。「小売展開には多額の初期投資が必須」という固定観念は、すでに過去のものとなりつつあります。

小売返品時にかかる費用
返品時には想定されるよりも多くの費用がかかります。分かりやすくお伝えするために、シャンプー150個(1500円)店舗を30店舗に配荷した場合の返品費用のシミュレーションをしてみます。
①商品を倉庫へ送り返す送料:約3万円
30店舗から宅配便などでメーカーの倉庫に送り返すお金です。
返送費用:1000円×30店舗=3万円
②倉庫での確認作業:約1万円
戻ってきた商品が傷んでいないか、倉庫のスタッフに一つひとつチェックしてもらうためのお金です。
③ ゴミとして捨てる費用(産業廃棄物):約22万5千円+α~
販売不可の状態で返ってきた商品は専門の業者にトラックで回収してもらい、「産業廃棄物」として正しく処分する費用です。
全て廃棄の場合:150本×1500=225,000+廃棄にかかった費用
★返品費用合計金額:約25万円前後
結論:25万円なら「テスト代」として割り切れる
30店舗での販売に挑戦して、もし全部売れ残って大失敗したとしても、かかるお金は約25万円ということが分かりました。
つまり、このお金は単なる「失敗による赤字」ではなく、「自分たちの商品がリアルなお店でどれくらい通用するのかを知るためのテスト代(テストマーケティング費用)」として考えれば、決して高くはないのです。
しっかりリアルな計算をして、最悪の場合のリスク(約25万円)が分かっていれば、「お店で売る」という新しい挑戦にも、安心して踏み出すことができます。
スモールスタートで成果を最大化する:BASE FOODのオフライン展開戦略
あの有名なBASE FOODも最初は数店舗から始まった
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションに掲げる完全栄養食の開発・販売企業「BASE FOOD(ベースフード)」は、食品D2Cの牽引役です。
2016年の創業以来、橋本舜氏が開発した商品は、100回以上の試作を経て完成しました。事業は2017年の完全栄養パスタ「BASE PASTA」のAmazon販売からスタートし、2019年に「BASE BREAD」、2021年に「BASE Cookies」とラインナップを拡充し、累計販売数は5,000万袋を突破しています。
同社はまず、自社ECでのサブスクリプションモデルの確立に注力し、年商60億円規模まで成長を遂げました。この成功の背景には、健康意識の高い30〜40代をターゲットとしたSNS広告(Facebook、Instagram)での効果的なパターン構築と、LPのファーストビューやCTA文言のA/Bテストによる徹底的なCVR改善があります。加えて、定期購入を核としたCRM施策として、顧客の離脱タイミングを分析しLINEなどでフォローすることでLTVの最適化を図りました。
D2Cで基盤を固めた後、より幅広い層へのトライアルを促すため、2021年3月からはコンビニエンスストア(ファミリーマート)での販売を開始しました。特筆すべきは、その慎重なスモールスタート戦略です。全国に広がるコンビニ網に対し、当初は関東地区の都心オフィス街を中心としたわずか14店舗(ファミマ!! サピアタワー店や虎ノ門ヒルズ店など)での限定的な販売から開始。そこで得られた実際のPOSデータと消費者反応の詳細な検証に基づき、関東地区の41店舗へと段階的に拡大しました。さらに同年10月には中部・関西地方へとエリアを広げ、現在はコンビニやドラッグストアを含む5万1676店舗の全国展開へと事業をスケールさせています。
参照:日本ネット経済新聞より
URL:https://netkeizai.com/articles/detail/13439/2/1/1

画像引用元:BASE FOOD Amazon公式ストア
店舗でトライアルしやすくして新規顧客を獲得する
BASE FOODのECサイトでは複数袋のまとめ買いによる定期購入(サブスクリプション)を基本としていますが、コンビニなどの小売店舗では1袋(237〜270円)の単品販売を行っています。「まとめ買いしておいしくなかったらどうしよう」と不安に感じる層に対し、単品販売を行うことによって初回購入ハードルを下げて、2回目以降は1袋あたりの単価が安い自社ECの定期購入へと誘導しています。

画像引用元:BASE FOOD 公式Webサイト
スモールスタート時に知っておくべき「卸売のリアルな契約と掛率」
スモールスタートを活かした「買取」の交渉術
バイヤーとの商談を成功させ、商品を最大限に販売するためには、自社の利益追求だけでなく、相手方(問屋・小売店)のリスクをいかに相殺・軽減できるかという論理的な説明が必要です。
交渉のポイント
-
返品:返品なしで進める場合、初回店舗数はかなり限られます。返品ありで進める場合、小売側は売れなかったとしてもリスクがないので、初回店舗数はある程度見込めます。
-
掛け率:基本カテゴリー相場の掛け率以上で交渉を進めます。返品不可・広告費用など他の条件が掛け率に影響を与えます。
-
展開場所:新発売時はエンド棚もしくはプロモーション棚展開を狙います。できるだけ目立つ場所に置いてもらうために、店舗限定の施策などを引き合いに交渉します。
利益率の低下を「圧倒的な販売ボリューム」でカバーする卸売の構造
小売展開へのもう一つの大きな懸念は、「利益率の低下」です。自社サイトで直接お客様に販売するD2Cとは異なり、卸売ビジネスでは「問屋」と「小売店」というプレイヤーが間に入ります。彼らもビジネスである以上、それぞれが利益(中間マージン)を取る構造になっています。たとえば、小売価格(お客様が買う値段)を100%とした場合、一般的な利益配分は以下のようになります。小売店の取り分が約30〜40%。問屋の取り分が約10〜15%。結果として、メーカー(自社)の手元に入ってくる売上(卸価格)は約45〜60%程度になります。ここから製造原価や物流費を引いたものが、最終的なメーカーの粗利です。ECでは1個売れば70%あった利益率が、卸売では半分以下に下がってしまうことも珍しくありません。「これでは儲からないのでは?」と不安になるかもしれませんが、悲観する必要はありません。実店舗展開の最大の狙いは、高い利益率を維持することではなく、「圧倒的な販売ボリューム」と「ブランド認知の獲得」にあります。1個あたりの利益が半分になっても、実店舗展開によって月間の販売数が10倍、100倍になれば、事業全体としてもたらされる利益額は爆発的に大きくなるのです。
テスト店舗の「消化率(POSデータ)」を武器に、全国展開へスケールさせる方法
1店舗あたりの「消化率(PI値)」を武器に全国展開を勝ち取る
数十店舗でのテスト販売がスタートし、無事に店頭から商品が売れ始めたとしましょう。ここで最も重要になるのが「消化率(販売スピード)」というリアルな数字の指標です。「1ヶ月で納品した分が全部売れました」という曖昧な結果報告では不十分です。「1店舗あたり、1日に平均して何個売れたか(PI値などの指標)」という具体的なPOSデータこそが、次のフェーズへ進むための最強の営業ツールになります。バイヤーに対する商談において、「ネットで話題の成分です」「SNSのフォロワーが10万人います」といった定性的なアピールは、もはや決定打にはなりません。しかし、「激戦区である渋谷のバラエティショップで、1日平均2.5個という高い消化率を記録しました。この確実な実績をもとに、全国の300店舗に横展開すれば、御社(問屋)にとっても月にこれだけの利益をもたらします」という提案はどうでしょうか。客観的で生々しい売れ行きデータに基づいた提案を行えば、問屋のバイヤーの態度は一変します。テスト販売で作った「小さな成功データ」をテコにして、バイヤーを説得し、全国展開という「大きな配荷(商品の割り当て)」を勝ち取る。これこそが、データドリブンなD2C企業が得意とするスモールスタート戦略の真骨頂です。
リスクを抑えて小売市場へ参入する
既存のEC顧客データから「戦うべき初期店舗」を割り出す
オフライン進出の第一歩は、既存のEC顧客のデータを徹底的に見直すことから始まります。自社の顧客の年齢層、居住エリア、趣味嗜好などのデータから、「彼らが休日にどの街の、どんな商業施設で買い物をしているか」というリアルなペルソナを描き出してください。既存顧客へのメールマガジンやLINEを通じて、「よく行くドラッグストアや雑貨店はどこですか?」と直接アンケートを取ってみるのも非常に有効で手堅い手段です。そのリアルな声をもとに、テスト販売の舞台としてふさわしい、ターゲット層が密集する数ブランドの店舗をリストアップします。

全体戦略から小売商談までを一気通貫でプロに任せる
ここまで戦略を理屈で理解できても、実際に実行に移すのは容易ではありません。大手卸のバイヤーへ直接交渉に挑み、不利な条件で契約を結ばないよう立ち回るのは、小売未経験の自社スタッフだけでは多大な労力と失敗のリスクが伴います。本気で小売市場を攻略し、自社ブランドを全国の棚に並べたいと考えるのであれば、オフライン展開の専門企業に頼るのが一番の近道です。
私たちは、お客様のブランドがオンラインで培ってきた強みや情熱を徹底的に分析し、それを「店頭で3秒で伝わる形」に再定義する「戦略」から考え、私たちが持つ独自の強力なネットワークを活用して「複雑な流通の壁を突破」し、実際のバイヤーとの商談から、導入後の店舗フォローアップという「現場実働」までを、すべて一気通貫で伴走支援するプロフェッショナルです。
「ネットでは売れているが、実店舗への出し方が全くわからない」
「過去にコンサルや営業代行に頼んだが、結局商品が棚に並ばなかった」
「自社のリソースだけでは、全国の店舗をフォローしきれない」
そのようなお悩みを抱えるメーカー・ブランド様は、ぜひ一度FBPにご相談ください。
貴社の丹精こめて作った素晴らしい商品を、全国の小売店の棚を通じて、まだ見ぬ多くのお客様の手へ確実に届けるための「最適解」をご提案いたします。まずは、貴社の商品が実店舗のどの市場と相性が良いか、無料相談・店舗相性診断からお気軽にお問い合わせください。現場を知り尽くした私たちが、全力でサポートいたします。
「何万個も在庫が必要」という誤解を捨て、正しいノウハウとパートナーを手に入れ、スモールスタートでオフライン市場という新たな成長ステージへ挑戦していきましょう。



コメント